麻 布 七 不 思 議
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五. 古川の狸ばやし
狸ばやしとは夜更けになるとどこからともなく、笛や太鼓などの囃子の音が聞こえてくるというもの。 音の聞こえる方向を探してもわからず、歩いているとお囃子の音がまるで自分を追いかけてくるような感じになるといわれる。 これは、古川が「三田側の山塊」と「麻布の山塊」に挟まれた渓谷を流れているため、遠くで演奏されているお囃子が「こだま」しあって 音源がわからなくなるからとも。
「十番わがふるさと」にはこの時代には祭囃子は農家の若衆の仕事で、渋谷、目黒村の百姓の青年たちは毎日夜になると神楽太鼓の練習に精を出していた。その太鼓の音律が 川面を伝わって、古川の曲がり角の芒(すすき)や萩の間から聞こえて狸囃しとなり、七不思議の一つとなったのであろう。とある。
麻布の丘と三田台の谷間に流れる古川も昔は清流だったそうだ。土手には花が咲き乱れ実にすばらしい眺めであり、戦前は泳ぐこともできたそうな。
江戸の頃、このあたり秋になるとすすきやはぎが咲き、月の出る頃になると 川からたぬき囃子が聞こえて、江戸の評判になったそうな。私の子供の頃には, もはやどぶ川になっていたので、さだかではない。
ちなみに先日一の橋を渡っていると、はらつつみを打てそうなデブ猫が歩いていた。
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このように「送り囃子・狸囃子」といわれているものの原理は「こだま」である。古川は麻布山塊・飯倉狸穴山塊と白金高輪山塊・三田丘陵という 武蔵野台地の最先端部の間を流れる川であり両岸斜面との距離が比較的短いために反響が起こりやすかったと思われる。特に古川橋〜天現寺間は 麻布山塊斜面⇔白金山塊斜面間の距離が500mほどと狭いために反響が起こりやすい。同様に麻布山塊斜面と三田丘陵間も反響したと思われるが、三田丘陵は 麻布山塊・白金山塊より10mほど標高が低いため、広尾〜古川橋間よりも反響しにくかったことが考えられる。
<各所の標高>・麻布山塊(薬園坂上辺):25m
・麻布山塊(仙台坂上辺):27m
・白金山塊(白金台駅辺):30m
・飯倉狸穴山塊(狸穴坂上辺)標高:26m
・三田丘陵(三井倶楽部辺)標高:19m
また、麻布には動物にちなむ地名が多く残され、特に広尾から古川端あたりは狸橋・狸蕎麦などの地名が残されており 江戸〜明治期くらいまでのこのあたりは農耕地や原野も残されていたとから多くの野生動物も生息していたことが想像される。 そして、現在もこの地域の古川ではサギ類の飛翔が多く目撃されている。
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